『雨に唄えば』の感想と構成分析
まのけいです。
今回は1952年のミュージカル映画『雨に唄えば』についてです。 雨の中で踊るシーンが超有名ですね*1。 ミュージカル映画なのでシナリオは薄めかもしれませんが、一回見た時点での感想と、二回目以降の分析を書いていきます。
基本情報
- 監督 : ジーン・ケリー / スタンリー・ドーネン
- 脚本: アドルフ・グリーン / ベティ・カムデン
- 音楽: ナシオ・ハーブ・ブラウン
- 公開: 1952年
- 製作国: アメリカ
- 時間 : 98分
感想
- スラップスティック系統のギャグが新鮮だった。特に
Make Em Laugh
がパワーがあって好き*2。 - イケメンが美女に出会って恋して結ばれる、という安心設計。
- 悪役のサイレント映画女優がアニメ声だったのは驚いた。最初は無邪気な感じで少しかわいそう…とか思っていたけれど、最後は自分勝手に行動して株が大暴落した。アニメの吹き替えに転校すれば良かったのに…。
- 終盤のブロードウェーミュージカルが長かった。よくわからない長い洋服で踊るシーンはちょっと謎だった。
- 主人公とヒロインが恋に落ちるまでのスピードが早くて驚いた。こいつキライ→だが申し訳ない事したし気になる→好き!って感じだった。気になる→あれ、好きかも、フェイズが欲しかった。野暮かもしれないが。
構成分析
主人公はサイレント映画のスターで、物語の開始時点で2つの嘘をついています。一つは、昔コメディ寄りの音楽をやっていた事、もう一つは悪役と付き合っているという事です。物語が終わった時、どちらの嘘もつかなくて良い=開放された状況になっています。主人公は”自分は本当に役者かどうか”という葛藤を抱えています。 三幕構成で考えてみると、第一幕はパーティに向かう途中ヒロインと出会い、ケンカして別れるシーンまでです。このシーンで主人公はヒロインに「お前なんて役者じゃない」と言われ、葛藤が生まれます(ここがPP1)。第二幕の終わりは悩みどころで、①映画が完成したシーン、②ミュージカル映画を作り始めるシーン、③主人公がヒロインと結ばれるシーン、のどれかになりそうです。①のシーンで主人公はヒロインに「僕の大切なファンは君一人だけ」と語りかけます。自分が本当に役者かどうかを気にしていた主人公が、ヒロインにどう思われるかどうかしか考えなくなった、という意味で大きなポイントです。しかし、全体のテーマとして役者をとるか恋をとるか、という葛藤はなかったため、唐突な気がします。②は問題を解決する手段を思いつき、それに向けて動き出したシーンです。このシーンの後に雨で踊る歌とブロードウェーの歌が入るので結構尺が長いです。手段を思いつく手前で主人国の口から直接的に「わたしはや役者じゃない」と語られます。これも大きなポイントです。③はトーキー映画の終わりを認め、ヒロインに敬意を持ち恋に落ちるシーンです。この時点で主人公の物語は終わっていて、後はその変化を試す試練が続いていると考える事もできそうです。第三幕の長さは①だと11分、②だと34分、③だと57分になります。今回は「主人公が役者かどうか」の葛藤を重要視して②のシーンまでを第二幕と考えます。結果、第一幕の長さが19分、第二幕の長さは43分、第三幕の長さが34分になります。第三幕が膨らんでいる、という分析結果が得られました。
まとめ
一行でまとめてみます。 サイレント映画のスターが、女優の卵と恋に落ちる過程で自分が役者として不足している点を自覚し、トーキー映画で活躍する話。
この"不足している部分"というのを際立たせた悪役の存在で、ストーリーが引き締まった気がします。
次回
次回はamazon primeでTVドラマ『TRICK』が配信されたようなので、その分析をしたいと思います。
*1:実は『時計じかけのオレンジ』の方を先に知ってしまったので、なんとも微妙な気持ちでした……。
*2:アニメ『プリパラ』の黄木あじみ先生は、この血を受け継いでいるのか…? 床に転がって円を描くアクションに見覚えが......。
『第三の男』感想と分析
まのけいです。
今回は1949年製作のイギリス映画、『第三の男』を視聴したので、感想と分析をしたいと思います。
基本情報
監督: キャロル・リード 脚本: グレアム・グリーン 音楽: アントン・カラス 時間: 105分
感想
- 言葉がわからないというカセが、不安を煽っていて良かった
- 映像的に面白いシーンが多かった。建物の影から登場する人物、影だけ見える人物などなど。
- 音楽が印象的。
- 主人公やヒロインがなぜハリーが好きか、という事があまり描かれていないので、感情移入が難しかった。
- ペイン軍曹が健気だった。
- 少し中だるみを感じた。
分析
この物語の主人公は貧乏作家のホリーです。彼が親友ハリーの死について探る過程を列挙してみます。
ハリーの死を知る→警官のキャラハンからハリーが悪党だと聞かされ、無実を証明するために調べ始める→ハリーの友人であるクルツ男爵に話を聞く→葬式に出ていたアンナに話を聞きに行く→門番から事件場所に"第三の男”が居たという話を聞く→アンナが警察に連れて行かれる→ハリーの死に立ち会った博士を尋ねる→アンナと死体を運んだポペスコに話を聞く→翌日、門番が証言してれることになる→ホテルでアンナにハリーの昔話をする→門番が殺される→キャロライン氏の下に行こうとするとが、講演に連れて行かれる→帰り道に追われる→キャラハンの下に行きハリーの悪事を知る→アンナの下に行き、国に帰ると告げる→その帰り道、ハリーらしき人影を発見する→キャラハンに報告し、地下道への入口を発見する→ハリーの墓を暴き、中から別人の死体が出てくる→アンナがロシアに連れて行かれそうになる→クルツ男爵にハリーを出せと直談判する→観覧車でハリーに詰問し、アンナを救うよう頼むが失敗する→ハリーを捕まえる囮になる代わりにアンナを開放する約束をする→アンナを列車に迎えに行くが、ハリーと引き換えは嫌だとパスポートを破く→キャラハンと一緒にハリーの被害者を見に行き、ハリーが協力を決意する→ハリーを捕まえようとし、追い詰める→本当に死んだハリーの葬式→アンナはホリーを見ずに去っていく
こう並べて書いてみると、途中からホリーの行動がアンナを助けようとするものに変わっています。そして、最終的にハリーを捕ま えようと思っています。
主人公の葛藤について考えてみます。 最初の欲求は「友人の名誉を取り戻したい」です。そこからヒロインが登場し、主人公はヒロインを口説き始めるのですが、フラれます。さらにヒロインの想い人であるハリーが彼女を切り捨てたと知り怒ります。そして彼女を救うためハリーの逮捕に協力します。主人公の変化した欲求は「友人を陥れたい」です。
三幕構成に分けるとしたら、第一幕が状況設定が終わるのが警官と口論を終え、男爵にアポをとるシーン。ここまでで12分。第三幕をハリーをおびき出すシーン以降と考えると、第二幕の終わりは病院を出たシーンと考えられます。すると第二幕が76分、第三幕が15分になります。1:5:1ぐらいですね。PP1はキャラハンに煽られて必ず事件を暴くと叫ぶシーン、PP2は病院で崩れたクマを見るシーンになると思います。
おそらく主人公の状態が4つぐらいあって「ハリーの名誉を守りたい」→「ヒロインを落としたい」→「ヒロインのためにハリーを捕まえたい」→「患者のためにハリーを捕まえたい」があると思います。ヒロイン関連の欲求が間に入っているだけで、基本的にはハリーに対する感情の変化を描いている作品である、と分析できます。
まとめ
一文でまとめてみます。
貧乏作家のホリーが、友人ハリーの死の真相をハリーの恋人と共に追う過程で彼の本性を知り、ハリーを警察にわたそうとする話。
サスペンスものは感情の変化が難しいです。展開で見せていく作風だからでしょうか。この年代の映画は状況設定が終わるのがとても早いです。
次回
そろそろ白黒映画以外で書きたいです…。
『市民ケーン』感想と分析
まのけいです。
今回は有名な映画『市民ケーン』を視聴したので、その感想と分析をしたいと思います。
※『市民ケーン』のネタバレを含みます。
基本情報
『市民ケーン』は1941年のアメリカ映画です。白黒です。AFIアメリカ映画ベスト100*1で、第一位に選ばれている作品です。特に撮影技法を駆使した演出が高く評価されています。以下敬称略。
- 監督: オーソン・ウェルズ
- 脚本: ハーマン・J・マンキーウィッツ / オーソン・ウェルズ
- 音楽: バーナード・ハーマン
- 公開: 1941年 (日本での公開: 1966年)
- 時間: 119分
感想
- 大富豪ケーン氏が死ぬ間際に残した『バラのつぼみ』という単語を追っていく話、という時点で興味が湧いた
- 回想が頻繁に挟まる構成と、映画の時点が何年かという感覚が現在と離れすぎていたことによって、時系列を追うのが大変だった
- 回想シーン内で、一瞬で時間が経過したり戻ったりして、大変だった
- ケーン氏の孤独な人生が浮き彫りになっていく終盤のシーンは、ケーン氏に共感できない*2ものの、どうしようもないほどの人間らしさを感じた。
- 「『バラのつぼみ』はパズルの1ピース...無くしたピースだよ」の台詞が、妻の趣味とリンクしているのが好き
- 最初のインタビューであくまで市民だよ、と言っているケーンの言葉が嫌味にしか聞こえなかったが、徐々にその意味が真実味を帯びてくるのに驚いた
- オープニングシーンのテンポこそ悪いものの、その後のシーンテンポがよく、緩急が付いた構成だと感じた。
分析
この物語で最も長い尺で語られているのは大富豪のケーン氏についてですが、物語を前に進めているのは記者のトムソンです。主人公をトムソンとして考えて、彼がどうやってケーン氏の言葉の謎を解こうとしたか、を順に追ってみます。
『バラのつぼみ』について調べるよう上司から命令される→二人目の元妻に会いに行く、が話を聞けない→後見人の手記を見に行く→ケーンの相棒に話を聞きに行く→ケーンの同級生に話を聞きに行く→二人目の元妻から話を聞く→ケーンの城の使用人に話を聞く→遺品の整理に立会い、これ以上の詮索をやめる
葛藤という面で見ると、トムソンの葛藤は『バラのつぼみ』を追うかどうか、というのがメインの葛藤に思えます。 三幕構成で考えてみると、状況設定が終わるのが映写室のシーンなので、そこまでが第一幕。ラストシーンがケーンの城ですから、きっとその前の場所、すなわち元妻のいたナイトクラブ(?)のシーンまでが第二幕でしょう。この区分でいくと、第一幕が14分、第二幕が92分、第三幕が10分になります。1:5:1ぐらいの比率です。クライマックスが薄く感じるのは、そのせいかもしれません。PP1は上司から命令されるシーン。明確になった欲求は『ケーンの言葉の謎を解きたい』。PP2は元妻と話していて『私にはケーンさんが哀れに見えてきました…』というシーンでしょうか。明確になった欲求は『ケーンの言葉の謎を解くこと自体に意味はない』。画面に写っている時間が短いので、葛藤が薄いように思えますが、変化は確実にありました。
では、ケーン氏の葛藤について考えてみます。回想シーンですが、ケーン氏は作中でいくつかの決断をしています。一つは彼の没落のきっかけとなった浮気についてです。ケーン氏は浮気をネタに、知事選の立候補をやめろと脅されます。妻は子供のことを考えて、知事選をやめてくれと言います。が、ケーン氏はそれを断ります。これが最初の妻が彼の元を去った理由になりました。
もう一つは友人のリーランドについてです。リーランドはケーンの扇動的なやり方が気に食わず、反目します。ケーンはなんとか手元に置こうとしますが、二番目の妻のオペラ記事を書き上げられなかったことでリーランドをクビにしてしまいます。これもリーランドを切り捨てる、という決断です。
最期の一つは、二番目の妻のオペラについてです。誰にも望まれないのに歌を歌い続けるのは苦痛だと二番目の妻は訴えますが、ケーン氏はそれを許しません。これが二番目の妻が去る原因になりました。
どれもケーン氏にダメージを与えましたが、作中では彼が悩んでいる描写はありません。即断即決でした。それは彼が自分勝手で、他人に何も与えようとしない人間であるからでしょう。むしろ、リーランドや二人の妻たちの方がケーン氏を捨てるか、一緒にいるかで葛藤していたように思えます。
葛藤しない=他人の意見を聞かない=強い男に見えていたケーンが、妻たちを失い再び孤独になった結果『バラのつぼみ』とつぶやき出したことに意味があるのだ、とトムソンは捉えたのでしょう。葛藤がない=どうしようもない、という魅力を新たに発見しました。
頭を使わずに考えると、二番目の妻が去ろうとしているシーンがクライマックスのような気がします。なぜなら、彼が本当に孤独になるかどうかの境目が、そこにあるからです。もしかすると、回想シーンの中に意味的な区切りがあるのかもしれません。起承転結で考えてみると、第一幕にあたる部分が起で、承がずっと続き、第二の妻がケーンの下から出ていくシーンを転と考え、結を最期の城のシーンとしてみます。こっちの方がそれっぽい気もしますが、主人公は誰だったんだ、という気にもなってきます。
ケーン氏の周囲の人物による群像劇形式だったと考えてみるのもいいかもしれません。それらを束ねているのがトムソンというわけです。それぞれ三幕構成が立てられそうな気もします。が、今回とりあげるのはやめておきます。
まとめ
一文でまとめてみます。
トムソンが大富豪ケーンの過去を追っていく内に、彼の悲しさに触れ、これ以上の詮索をやめる話。
印象的なシーンや台詞が多かったです。昔の映画なので敬遠していましたが、素直に面白かったです。シーンのつなぎも効果的で、みなこれをみて勉強したんだろうな…という印象でした。 自分の願いだけではなく、相手の願いも叶えなくては愛とは言えなさそうです。『お前のためだ』と言っているときは大抵自分のためですよね。結局その言葉の裏に隠れているのは『お前のためだ。だから俺の言うことを聞け』ですからね...。割と言いがちですけど。
次回
次回は明るいアニメにしようと思います。
*1:2018年版はないようです。https://ja.wikipedia.org/?curid=2887922
*2:そもそも真の意味で他人に共感なんて土台無理なのだが......。
『シナリオの基礎技術』の個人的まとめ
まのけいです。
今回は『シナリオの基礎技術』を今更ながら購入したので、自分なりに大事だと思ったポイントをまとめていきたいと思います。
心構え的なところ
- どんな場所でも、日常生活で起きた出来事を柱→舞台設定→動作→台詞の順にスケッチする訓練ができる。
- 小説と脚本は違う
「恋を打ち明けたいと思って迷った」を映像としてどう描くかを考える。例えサイレントでも伝える事はできる。
執筆始める前段階について
- テーマ(何を言いたいか)が必要
- テーマをそのまま書いたら論文。感動させるために、モチーフによってテーマを感情化する
- テーマにぴったりのモチーフを見つける。
- テーマとモチーフを決めたら、もっと具体的な素材を考え始める
- テーマから始めない執筆法もある
起承転結の考え方
- 起 情勢・場所・人物(天地人)を紹介する。
- 承 全体の80%~90%を占める。実際にドラマが進行していく。
- 転 テーマを感じさせるポイント。
- 結 テーマの定着と余韻をもたせる。
執筆にあたって
- リトマス法
ある状態の人物に、他の人物・事件・台詞・小道具・事情等を投げ込み、それに対するリアクションを描写する事で、その人物の心理や感情を描くことができる。 - クライマックスで説明や議論をしない。それらは理性に訴えかけるもので感情には訴えかけないから。
描写について
『的確な描写』へのステップ
- 意思を伝達する術を身につける
①原稿用紙へ、自分が思ったように書けるかどうか。
②原稿用紙に目を通して読んで、自分の思った事が的確に伝わるかどうか。
③声に出して読んで、自分の思ったことが伝わるかどうか。 いい脚本を書く術を身につける
①正しく感情が伝わるようなリアクションを書けるか
②きちんと的確に強調できるか
③的確に魅力を表現できるか
④的確な構成を選択できるか原則として、そこで発生するドラマに必要なものだけ描く
- 情景にもテーマがある。なぜその情景でなければいけないか、という理由がわかるようにする。
- 『男が失恋のやるせない気持ちで石を蹴る』は可能だが、映像的には単に「石を蹴る男」でしかなく、的確でない。
まとめ
やることがいっぱいある。手を動かさなければ…。
次回
先を読み次第追記ししていく予定ですが、今日はもうお腹いっぱいなので終わりにします。 次回は今回学んだことを踏まえて『恋愛ラボ』第一話の脚本化をやってみたいと思います。
『絶対零度 〜未然犯罪潜入捜査〜 』第一話の感想と逆バコ
まのけいです。
今回はフジテレビ系のTVドラマ、『絶対零度 〜未然犯罪潜入捜査〜 』の第一話を見たので、感想と個人的な分析を書きたいと思います。一回見た段階で感想を書き、二回目以降で分析していきます。
※注意※ 第一話のネタバレ含みます。
基本情報
TVドラマ『絶対零度』シリーズは2010年から放送されている刑事ドラマです。各シーズンで捜査班が異なっていて、season 1は『〜未解決事件特命捜査〜』、season 2は『〜特殊犯罪潜入捜査〜』です。そして、今回取り上げるseason 3が『〜未然犯罪潜入捜査〜 』です。
ざっくり言うと、『絶対零度 〜未然犯罪潜入捜査〜 』は日本版『PERSON of INTEREST』*1です。*2 以下敬称略。
感想(一回目)
思ったことを箇条書きで。
- 主人公の井沢範人(沢村一樹)のキャラクターに興味をもった。冒頭の銃撃シーン→おちゃらけた印象の上司→犯人銃撃シーンの並びで、この人はどうして現在の状態になったのか、気になる。
- 上記の通り、謎の多すぎる主人公には感情移入できなかったけど、犯罪予知の正当性を疑う山内徹(横山裕)に感情移入できた。まぁちょっと感情的すぎる性格になってるけど。すぐ犯人捕まえようとするし。
- 個性豊かなユニットメンバーが、それぞれ担当する分野が決まっていて、覚えやすくてよかった。
- 中盤、潜入がバレそうになるシーンでハラハラした。
- 犯人の「頼むよ、親友じゃないか」の前振りはすばらしい。王道の裏切るフラグ。
- 井沢と山内のクールVS熱血の構図はわかりやすくてよかった。さらに、クールだと思っていた井沢もちょっと危ない人かも…というヒキは王道でよかった。
- 全体的に、丁寧に前振り→回収を行っていた印象。TVドラマは第一話で切られてしまうことも多そう。そのせいか第一話だけで回収しない伏線も多かった。
- 設定を生かして、最後まで殺害対象が二転三転する展開は良かった。
分析(二回目)
全体で70分。逆ハコだけで原稿用紙10枚以上になってしまいました。カットバック(同時進行でいろんな場所を切り替えて映していくやつ)が多用されていたので、どうやって書こうか迷っていた時間も長かったです。 全体の流れを以下に列挙します。
- アバン
設定説明+人物説明を兼ねた最初の事件。およそ15分。 - Aパート
今回犯罪を起こすと予知された富樫の捜索→事務所の血痕を発見。およそ10分。 - Bパート
血痕は富樫のもの→富樫を殺害した犯人の捜索→共同経営者の西田を追う→西田が須藤と前川を拉致→二名を調べる。およそ7分。 - Cパート*3
それぞれの監視→須藤が富樫を殺害した疑惑浮上→死体の場所がわかる→それを通報し捜査から降りる山内。
およそ5分。 - Dパート
須藤の会社に潜入→富樫がやっていた裏ビジネスの手がかり入手→裏ビジネスについて相談する須藤と前川を盗聴→彼らが密輸犯だと判明→山内の単独捜査で須藤と富樫の接点浮上→山内の通報のせいで須藤が危険人物リスト入りしたことを咎める井沢→東堂に桜木の話をされ、やる気を出す山内→山内捜査に加入。密輸の現場を押さえ、殺人を食い止ようと団結するメンバー。
およそ16分。 - おそらく実質Eパート(Dパート後半)
取引現場を抑えようとするが、西田が成田に向かっていることがわかる→西田が金塊を強奪しようとしていると予測→須藤を尾行していた田村が気絶→運び屋が半分しかいないことが判明→受け渡しポイントで西田と運び屋が合流。普通に受け渡しが終わる→井沢、須藤が前川を裏切り殺害しようとしていることに気がつく→須藤、別の合流ポイントで前川を気絶させ、山奥へ→前川を殺そうとする須藤、井沢の登場で止められる→西田、小田切に確保される→須藤、つかまる→内々に事件が処理される→次回への伏線
およそ16分。
ざっくりと捉えると、山内が捜査を肯定するがどうか、という葛藤を事件モノでくるんだ形であることがわかりました。 山内の気持ちを段階を踏んで考えると、未然犯罪捜査なんでありえない→でも防げるならアリかも→防げないじゃんやっぱりダメ。でも上司の指示だしな…→もう本気でダメ。勝手に通報して捜査やめます→やっぱり放置するのも気持ち悪いから正規手段で単独捜査しよ→自分のせいで新しい殺人が生まれちゃった…後悔→桜木さんならどうしただろう。いや、オレはオレだ!→まだ信じてないけど、殺人を防ぐためなら協力します
こう分解してみると、桜木が山内にとってどういう人物で、なぜ捜査に協力的になったのかという点がちょっと分かりづらい印象を受けました。捜査やめた後も勝手に単独捜査している訳ですし。山内の葛藤はあくまでサブプロットだと考えれば、これでいいのかなぁとも思います。メインは井沢の活躍ですし。
三幕で考えると、富樫の説明が終わりメンバーが動き出す所までが第一幕。最初の目的が決まるのがそこなので。次に、第二幕は前川と須藤の目論見が判明し、密輸現場を抑え犯罪を防ぐぞ、と最後の目標が決まるところまで。第三幕は成田以降の一連のシーン。事件自体にプロットポイントがあるかどうかはわかりませんが、山内に注目すると、PP1が山内が初動捜査でごねるシーン。明確になった欲求は『違法捜査だからやめたい』。PP2は東堂に桜木のことを話されるシーン。ちょっと山内の感情が読み取れませんが、理論的にはPP1の逆になるはずなので、明確になった欲求は『違法捜査だけどやりたい』?
上記の三幕構成として捉えると、第一幕が18分。第二幕が35分。第三幕が16分。ほぼ1:2:1ですね…。
まとめ
一文でまとめてみます。
井沢が未然に犯罪を防ぐ話。
主人公に葛藤とかなかったので、どう処理していいか迷いました。事件モノは物語の骨格としてはシンプルになってしまうのかもしれません。どう謎を解決するかがメインですから。葛藤以外で物語を捉えないとこの理解からは逃れられない気がします。
次回
次回こそ名画を一つ見て分析したいです。
*1:アメリカのTVドラマ。2011年~2016年。私はかなり好きです。
*2:今調べたら放映当時、TVアニメ『PSYCHO-PASS』のパクリだと言われていたようです。ただ、パクリだと言い出したらキリがないという事は確かです。
*3:こうやってカウントしていって良いんでしょうか。
『プリティーリズム・オーロラドリーム』第一話の感想+逆バコ
まのけいです。
今回は結構前の女児向けアニメ『プリティーリズム・オーロラドリーム』の第一話を見たので、その感想と分析を書いていきたいと思います。
一周目は脳死で楽しみ、二週目以降で分析をしたいと思います。
基本情報
『プリティーリズム・オーロラドリーム』は、アーケードゲーム『プリティーリズム』シリーズのアニメ化作品です。男児向けだと『昆虫王者ムシキング』の立ち位置ですね*1。続編に『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』『プリティーリズム・レインボーライブ』があり、後継として『プリパラ』、『キラッとプリ☆チャン』があります。これら全部まとめて『プリティーシリーズ』と括られることもあります(全てアニメと並行してアーケードゲームが稼働しています)。来年がアーケード稼働から10周年らしく、それを記念していろいろ動きがあるみたいですね。
以下に基本的な情報を列挙します。(敬称略)
- 原作: タカラトミー・シンソフィア
- 監督: 菱田正和
- シリーズ構成: 赤尾でこ
- キャラクターデザイン: 渡辺明夫(原案)・川島尚
- 音楽: 長岡成貢
- アニメーション制作: タツノコプロ
- 公開: 2011年4月~2012年3月
- 話数: 全51話
感想 (一周目)
まとめようとすると分析っぽくなってしまうので箇条書きで。
- 家族関係のパワーバランスが面白い。
- あいらはいい子なんだなぁ、ときちんとお手伝いをしている様子で思った。
- 洋服好き描写が生き生きしていてよかった。
- スカウトのお兄さんはイケメンじゃなかったら変質者。
- プリズムストーン(服が入ったアイテム)とプリズムショーの世界が、意外とシステマチックっぽくて驚いた。
- あいらが立ち上がるシーン。「服が台無しになってるぞ!」で立ち上がるのは納得感があった。
- 実家の家業を反映した必殺技(プリズムジャンプ)は納得できる。
- りずむちゃんがあいらを見ている目にヒヤヒヤする。
- りずむちゃん、やる気があるのにプリズムジャンプ跳べなくてかわいそうだなと思った。
- りずむちゃんが謎めいていて、かつプリズムジャンプが飛べるのを応援したいから次が見たい。
分析(二周目、三周目)
全体の尺である21分30秒からOPや実写パ―トなどを引くと、本編は実質16分半程度。Aパートは自宅でのやり取りで5分、モールで3分。Bパートはショーが始まるまで4分。始まってから4分半。そのまま起承転結で4分割できそう。
三幕で考えるなら、プリズムショーの衣装を見てジャンプしたくなるところまでが第一幕か。連れられて踊るかどうか迷って「服の声を聞くんだ!」で立ち上がったところまでが第二幕。プリズムジャンプして驚くのが第三幕。でもこれだと第一幕が長すぎる気もする。第一幕を「みおん様のような読モになりたい!」までにして、第二幕の終わりを「プリズムショーの衣装を着てみたい」、それ以降を第三幕、と考えるのもアリか。すると今度は三幕が長すぎるような気がする。
どちらにしろ「プリズムショーの衣装を着てみたい」は物語開始時点では存在しなかった新たな欲求なので、シリーズ全体のPP2はここかもしれない。(読モ→プリズムショーへ夢が変化する話だとしたら)
まとめ
一文でまとめてみます。
洋服が好きな女の子あいらが、プリズムショーの衣装を見て着てみたいと思い、はじめてのプリズムショーに臨むもコケてしまい落ち込むが、きれいな衣装を映えさせるために立ち上がり、プリズムジャンプを成功させる話。
うーん。こういうのはシリーズ全体で考えた方がいいのだろうか。 個人的に、りずむちゃんが同じ初心者のあいらがプリズムジャンプできたのを見て、すぐ悔しがるのではなく「何で…」となるのが好きです。同様に、最後のシーンの、ポカンとしていて受け入れられない表情からぎゅっと口を結ぶ、という描写が人間味があって好きです。
次回
次回は何か映画やりたいと思います。
アニメ『恋愛ラボ』の逆ハコをしてみて気がついたこと
まのけいです。
今日は構成力がつくと噂の「逆バコ」と呼ばれている作業をやってみたので、感想を書きたいと思います。
ハコ書きと逆バコ
プロットが完成した後、各シーンの並びと大まかな出来事を書き出す作業を「ハコ書き」と言うらしいです。*1 今回やったのは、すでに完成した映像作品をハコ書きに戻す作業、通称「逆バコ」です。いろんな先生の本を読んでも、みんなこの「逆バコ」をして力を付けたそうです。これはやってみるしかない。
気がついたこと
結論から言うと、もしかして日常コメディ4コマもので逆バコしても、意味が薄いのかもしれないと思いました。 流れは把握できました。キャラの登場シーンも抑えました。あとどうすれば……?
面白いと感じた理由が見つかったか、と問われると微妙なところです。30分の中で恋愛研究を4つもやってるので、かなり密度が濃いなという事がわかったぐらいです。ほとんど生徒会室内の漫才で、構成というよりどちらかと言うと動作や演技で見せているのかぁと思いました。脚本まで落とし込んでみたらもっと発見があるかもしれません。
まとめ
自分なりの最終課題として、話の内容を1文にまとめてみました。
お嬢様学園に通うボーイッシュな少女リコが、大人し過ぎて敬遠していたマキの恋愛研究に巻き込まれる中で、彼女も自分と同じ普通の乙女だと知り、名前で呼び合うほど仲良くなる話。
次回
次回はプリティーリズム・オーロラドリーム1話の逆バコします。