もじもじ大作戦

映画やTVアニメの構成を分析したり、気づいたことを毎日書きます。

「シュガー・ラッシュ」と「リメンバー・ミー」で三幕構成をざっくり説明してみる

まのけいです。

今日は第一回なので、そもそも三幕構成って何か、について書きたいと思います。
かなりざっくりかつ、自分なりの解釈やまとめが入ってるので、そうじゃねぇよ!となるかもしれません。その時はコメントください。勉強します。
きちんと詳しく厳密に知りたい方は『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術』を購入して呼んでもらった方が絶対早いです。

※『シュガー・ラッシュ』および『リメンバー・ミー』のネタバレ含みます。

三幕構成とは

三幕構成は、脚本(拡大解釈すると物語全般)を構成する手法の一つです。
特徴は、全体を第一幕第二幕第三幕に分けて考える点です。
第一幕では状況設定を、第二幕では葛藤を、第三幕では解決を描きます。それぞれの比率も決まっていて、大体1:2:1の関係になるようにします。
三幕構成に則ると、ハリウッドっぽい王道な感じの物語が完成します。なぜなら、多くのハリウッド映画は三幕構成を使って作られているからです。なぜハリウッドで三幕構成が使われているかというと、現在、エンタメ映画を構成する手法の中で最強*1だからです。

各幕の役割

第一幕

第一幕では状況設定を描く、と書きました。もっと砕けていうと、第一幕を終えた後、この質問に答えられればOKです。

主人公は誰で、何をしたいのか?

まず冒頭、主人公は誰で、どんな日常を送っているかを描きます。

ピクサー映画だと、ちょっとつらい状況にある主人公の日常パートです。『シュガー・ラッシュ』なら、ゲームの悪役である主人公ラルフが、除け者にされ、不満に思っているパート。 『リメンバー・ミー』なら、本当は音楽家になりたい主人公ミゲルが、家族から音楽を厳しく禁止されているパートです。

次に主人公は、何らかのきっかけで明確な欲求を獲得します。この何らかのきっかけをプロットポイント1(以下PP1)と呼びます。

シュガー・ラッシュ』におけるPP1は、ラルフがパーティに呼ばれず、皆に囲まれているヒーロー、フィリックスをうらやましく思うシーン。明確になった欲求は「フィリックスのようなヒーローになりたい」です。
リメンバー・ミー』なら、憧れのミュージシャン、デラクレスのビデオを見るシーン。明確になった欲求は「デラクレスのような音楽家になりたい」です。

そして主人公は、安定した日常を変化させる手段を得て、危険な非日常へと旅立ちます。ここまでが第一幕です。

シュガー・ラッシュ』なら、パーティに乗り込んだラルフが、ヒーローの証であるコインを手に入れたら呼んでやる、と言われるシーン。手に入れた手段は「ヒーローの証であるコインを手に入れる」です。
リメンバー・ミー』なら、祖母にギターを壊されたミゲルが家出をするシーン。手に入れた手段は「家族に無断で街のコンテストに出場する」です。

ジョジョの奇妙な冒険 第三部』なら、ホリィを助けるため、承太郎一行が重なりながら「行くぞ!」と並んでいる例のシーンが、ちょうど第一幕の終わりに当たるでしょう。

第二幕

第二幕は葛藤です。PP1で獲得した欲求を満たすために、様々なミッションに挑みます。大抵、ミッションは困難なものです。それをどう攻略するか、挫けずに欲求を満たせるのかを描きます。

シュガー・ラッシュ』では、ラルフはコインを手に入れるために別のゲームに侵入します。そこでヴァネロペという少女に出会い、彼女をレースゲームで優勝させる(ミッション)ことでコインを手に入れようとします。が、彼女は運転をしたことがなく......と続いて行きます。
リメンバー・ミー』では、ミゲルは死者の世界に迷い込んでしまい、音楽をやめなければ現実世界に戻さない、と先祖に言われていまいます。代わりに父親のデラクレスに現実世界に戻してもらおう(ミッション)と彼を探しますが、死後の世界でも彼は有名で......となります。

ミッションを多く設置することで、長く物語を続けることができます。連載マンガはミッションの塊です。『ジョジョの奇妙な冒険 第三部』は、母ホリィを救うため宿敵DIOを倒そうとあれこれする話ですが、DIOと戦うまでに20人以上の刺客が登場します。そのたびに『刺客を倒す』という新しいミッションが発生し、ミッションを攻略する過程を毎話描くことで話を続けているのです。

では、終わらせるにはどうすればいいか。事態を深刻にすればいいんです。 これまで主人公が攻略してきたミッションで最も難しいもの、要するにラスボスを登場させるのです。ラスボスは、物理的に攻撃してくる人間かもしれませんし、精神的に最初の欲求を強く否定する新たな欲求かもしれません。 とにかく、ラスボスに直面した主人公には何らかの犠牲が発生します。そこで主人公は、最初に獲得した欲求を突き通すかどうか、最後の決断を迫られます。そして、何らかのきっかけを経て、決断します。この最後の決断のきっかけをプロットポイント2(以下PP2)と呼びます。

シュガー・ラッシュ』のメインの葛藤は、ヒーローになるか、ヴァネロペとの友情(新たな欲求)か、どちらを選ぶかというものです。よってPP2はラルフがコインを捨てるシーンです。行った決断は「ヒーローにはならない(ヴァネロペを見捨てない)」です。 『リメンバー・ミー』のメインの葛藤は、デラクレスのような有名な音楽家になるか、家族か、どちらを選ぶかというものです。よってPP2はミゲルがデラクレスに牢獄に落とされ、家族の言葉の意味が分かっていなかったと後悔するシーンです。行った決断は「デラクレスのような音楽家にはならない(家族を大事にする)」です。

そして、PP2で獲得した欲求を満たすための手がかりを得て、最終決戦へ向かいます。ここまでが第二幕です。

シュガー・ラッシュ』では、PP2の結果、ヴァネロペを救う手がかりを得て、彼女のいるゲームへと走り出します。
リメンバー・ミー』では、PP2の結果、本当の父親が相棒のヘクターだったことがわかり、先祖たちの助けを借りて、ヘクター(家族)を救うためデラクレスのライブ会場へ向かいます。

第三幕

第三幕は解決を描きます。PP2で獲得した欲求を満たすため、ラスボス(ラストミッション)に挑みます。第三幕では主人公に迷いはなく、ただミッションの遂行を目指します。その過程で、PP2を経て具体的にどう変わったかが描かれます。

シュガー・ラッシュ』では、もうヒーローへの嫉妬はありませんから、監獄に囚われたヒーローを救う、という展開があります。さらに、ゲーム全体が大災害に襲われても、ラルフはヴァネロペを助けに行きます。
リメンバー・ミー』では、もう家族間の確執はありませんから、家族全員が協力してデラクレスの悪事を暴こうとします。さらに、タイムリミットを過ぎかけても、ミゲルは決してヘクターを救うことを諦めません。

そして、ラストミッションの結果が出て、主人公は日常に戻ります。しかし、主人公は物語を経て変わったので、主人公を取り巻く日常もまた変わります。

シュガー・ラッシュ』では、ラルフはゲームの住人たちと和解し、悪役に誇りを持ちます。
リメンバー・ミー』では、ミゲルは次の年の死者の日に家族のために、家族と一緒に歌を歌います。

まとめ

  • 三幕構成は物語を描くための構成法
  • 第一幕で欲求の獲得
  • 第二幕はミッション、ミッション、ミッション
  • 第二幕の終盤に失敗、考え直す
  • 第三幕はラストミッション+変化した日常

*1:一番流行っている戦法、という方が正確かも。強いから流行っている。故に読まれやすい、みたいなイメージ。