もじもじ大作戦

映画やTVアニメの構成を分析したり、気づいたことを毎日書きます。

『絶対零度 〜未然犯罪潜入捜査〜 』第一話の感想と逆バコ

まのけいです。

今回はフジテレビ系のTVドラマ、『絶対零度 〜未然犯罪潜入捜査〜 』の第一話を見たので、感想と個人的な分析を書きたいと思います。一回見た段階で感想を書き、二回目以降で分析していきます。

※注意※ 第一話のネタバレ含みます。

基本情報

TVドラマ『絶対零度』シリーズは2010年から放送されている刑事ドラマです。各シーズンで捜査班が異なっていて、season 1は『〜未解決事件特命捜査〜』、season 2は『〜特殊犯罪潜入捜査〜』です。そして、今回取り上げるseason 3が『〜未然犯罪潜入捜査〜 』です。

ざっくり言うと、『絶対零度 〜未然犯罪潜入捜査〜 』は日本版『PERSON of INTEREST』*1です。*2 以下敬称略。

  • 演出: 佐藤祐市
  • 脚本: 浜田秀哉
  • 音楽: 横山克
  • 制作: フジテレビ
  • 公開: 2018年7月~9月
  • 話数: 全10話

感想(一回目)

思ったことを箇条書きで。

  • 主人公の井沢範人(沢村一樹)のキャラクターに興味をもった。冒頭の銃撃シーン→おちゃらけた印象の上司→犯人銃撃シーンの並びで、この人はどうして現在の状態になったのか、気になる。
  • 上記の通り、謎の多すぎる主人公には感情移入できなかったけど、犯罪予知の正当性を疑う山内徹(横山裕)に感情移入できた。まぁちょっと感情的すぎる性格になってるけど。すぐ犯人捕まえようとするし。
  • 個性豊かなユニットメンバーが、それぞれ担当する分野が決まっていて、覚えやすくてよかった。
  • 中盤、潜入がバレそうになるシーンでハラハラした。
  • 犯人の「頼むよ、親友じゃないか」の前振りはすばらしい。王道の裏切るフラグ。
  • 井沢と山内のクールVS熱血の構図はわかりやすくてよかった。さらに、クールだと思っていた井沢もちょっと危ない人かも…というヒキは王道でよかった。
  • 全体的に、丁寧に前振り→回収を行っていた印象。TVドラマは第一話で切られてしまうことも多そう。そのせいか第一話だけで回収しない伏線も多かった。
  • 設定を生かして、最後まで殺害対象が二転三転する展開は良かった。

分析(二回目)

全体で70分。逆ハコだけで原稿用紙10枚以上になってしまいました。カットバック(同時進行でいろんな場所を切り替えて映していくやつ)が多用されていたので、どうやって書こうか迷っていた時間も長かったです。 全体の流れを以下に列挙します。

  • アバン
    設定説明+人物説明を兼ねた最初の事件。およそ15分。
  • Aパート
    今回犯罪を起こすと予知された富樫の捜索→事務所の血痕を発見。およそ10分。
  • Bパート
    血痕は富樫のもの→富樫を殺害した犯人の捜索→共同経営者の西田を追う→西田が須藤と前川を拉致→二名を調べる。およそ7分。
  • Cパート*3
    それぞれの監視→須藤が富樫を殺害した疑惑浮上→死体の場所がわかる→それを通報し捜査から降りる山内。
    およそ5分。
  • Dパート
    須藤の会社に潜入→富樫がやっていた裏ビジネスの手がかり入手→裏ビジネスについて相談する須藤と前川を盗聴→彼らが密輸犯だと判明→山内の単独捜査で須藤と富樫の接点浮上→山内の通報のせいで須藤が危険人物リスト入りしたことを咎める井沢→東堂に桜木の話をされ、やる気を出す山内→山内捜査に加入。密輸の現場を押さえ、殺人を食い止ようと団結するメンバー。
    およそ16分。
  • おそらく実質Eパート(Dパート後半)
    取引現場を抑えようとするが、西田が成田に向かっていることがわかる→西田が金塊を強奪しようとしていると予測→須藤を尾行していた田村が気絶→運び屋が半分しかいないことが判明→受け渡しポイントで西田と運び屋が合流。普通に受け渡しが終わる→井沢、須藤が前川を裏切り殺害しようとしていることに気がつく→須藤、別の合流ポイントで前川を気絶させ、山奥へ→前川を殺そうとする須藤、井沢の登場で止められる→西田、小田切に確保される→須藤、つかまる→内々に事件が処理される→次回への伏線
    およそ16分。

ざっくりと捉えると、山内が捜査を肯定するがどうか、という葛藤を事件モノでくるんだ形であることがわかりました。 山内の気持ちを段階を踏んで考えると、未然犯罪捜査なんでありえない→でも防げるならアリかも→防げないじゃんやっぱりダメ。でも上司の指示だしな…→もう本気でダメ。勝手に通報して捜査やめます→やっぱり放置するのも気持ち悪いから正規手段で単独捜査しよ→自分のせいで新しい殺人が生まれちゃった…後悔→桜木さんならどうしただろう。いや、オレはオレだ!→まだ信じてないけど、殺人を防ぐためなら協力します

こう分解してみると、桜木が山内にとってどういう人物で、なぜ捜査に協力的になったのかという点がちょっと分かりづらい印象を受けました。捜査やめた後も勝手に単独捜査している訳ですし。山内の葛藤はあくまでサブプロットだと考えれば、これでいいのかなぁとも思います。メインは井沢の活躍ですし。

三幕で考えると、富樫の説明が終わりメンバーが動き出す所までが第一幕。最初の目的が決まるのがそこなので。次に、第二幕は前川と須藤の目論見が判明し、密輸現場を抑え犯罪を防ぐぞ、と最後の目標が決まるところまで。第三幕は成田以降の一連のシーン。事件自体にプロットポイントがあるかどうかはわかりませんが、山内に注目すると、PP1が山内が初動捜査でごねるシーン。明確になった欲求は『違法捜査だからやめたい』。PP2は東堂に桜木のことを話されるシーン。ちょっと山内の感情が読み取れませんが、理論的にはPP1の逆になるはずなので、明確になった欲求は『違法捜査だけどやりたい』?
上記の三幕構成として捉えると、第一幕が18分。第二幕が35分。第三幕が16分。ほぼ1:2:1ですね…。

まとめ

一文でまとめてみます。

井沢が未然に犯罪を防ぐ話。

主人公に葛藤とかなかったので、どう処理していいか迷いました。事件モノは物語の骨格としてはシンプルになってしまうのかもしれません。どう謎を解決するかがメインですから。葛藤以外で物語を捉えないとこの理解からは逃れられない気がします。

次回

次回こそ名画を一つ見て分析したいです。

*1:アメリカのTVドラマ。2011年~2016年。私はかなり好きです。

*2:今調べたら放映当時、TVアニメ『PSYCHO-PASS』のパクリだと言われていたようです。ただ、パクリだと言い出したらキリがないという事は確かです。

*3:こうやってカウントしていって良いんでしょうか。