『雨に唄えば』の感想と構成分析
まのけいです。
今回は1952年のミュージカル映画『雨に唄えば』についてです。 雨の中で踊るシーンが超有名ですね*1。 ミュージカル映画なのでシナリオは薄めかもしれませんが、一回見た時点での感想と、二回目以降の分析を書いていきます。
基本情報
- 監督 : ジーン・ケリー / スタンリー・ドーネン
- 脚本: アドルフ・グリーン / ベティ・カムデン
- 音楽: ナシオ・ハーブ・ブラウン
- 公開: 1952年
- 製作国: アメリカ
- 時間 : 98分
感想
- スラップスティック系統のギャグが新鮮だった。特に
Make Em Laugh
がパワーがあって好き*2。 - イケメンが美女に出会って恋して結ばれる、という安心設計。
- 悪役のサイレント映画女優がアニメ声だったのは驚いた。最初は無邪気な感じで少しかわいそう…とか思っていたけれど、最後は自分勝手に行動して株が大暴落した。アニメの吹き替えに転校すれば良かったのに…。
- 終盤のブロードウェーミュージカルが長かった。よくわからない長い洋服で踊るシーンはちょっと謎だった。
- 主人公とヒロインが恋に落ちるまでのスピードが早くて驚いた。こいつキライ→だが申し訳ない事したし気になる→好き!って感じだった。気になる→あれ、好きかも、フェイズが欲しかった。野暮かもしれないが。
構成分析
主人公はサイレント映画のスターで、物語の開始時点で2つの嘘をついています。一つは、昔コメディ寄りの音楽をやっていた事、もう一つは悪役と付き合っているという事です。物語が終わった時、どちらの嘘もつかなくて良い=開放された状況になっています。主人公は”自分は本当に役者かどうか”という葛藤を抱えています。 三幕構成で考えてみると、第一幕はパーティに向かう途中ヒロインと出会い、ケンカして別れるシーンまでです。このシーンで主人公はヒロインに「お前なんて役者じゃない」と言われ、葛藤が生まれます(ここがPP1)。第二幕の終わりは悩みどころで、①映画が完成したシーン、②ミュージカル映画を作り始めるシーン、③主人公がヒロインと結ばれるシーン、のどれかになりそうです。①のシーンで主人公はヒロインに「僕の大切なファンは君一人だけ」と語りかけます。自分が本当に役者かどうかを気にしていた主人公が、ヒロインにどう思われるかどうかしか考えなくなった、という意味で大きなポイントです。しかし、全体のテーマとして役者をとるか恋をとるか、という葛藤はなかったため、唐突な気がします。②は問題を解決する手段を思いつき、それに向けて動き出したシーンです。このシーンの後に雨で踊る歌とブロードウェーの歌が入るので結構尺が長いです。手段を思いつく手前で主人国の口から直接的に「わたしはや役者じゃない」と語られます。これも大きなポイントです。③はトーキー映画の終わりを認め、ヒロインに敬意を持ち恋に落ちるシーンです。この時点で主人公の物語は終わっていて、後はその変化を試す試練が続いていると考える事もできそうです。第三幕の長さは①だと11分、②だと34分、③だと57分になります。今回は「主人公が役者かどうか」の葛藤を重要視して②のシーンまでを第二幕と考えます。結果、第一幕の長さが19分、第二幕の長さは43分、第三幕の長さが34分になります。第三幕が膨らんでいる、という分析結果が得られました。
まとめ
一行でまとめてみます。 サイレント映画のスターが、女優の卵と恋に落ちる過程で自分が役者として不足している点を自覚し、トーキー映画で活躍する話。
この"不足している部分"というのを際立たせた悪役の存在で、ストーリーが引き締まった気がします。
次回
次回はamazon primeでTVドラマ『TRICK』が配信されたようなので、その分析をしたいと思います。
*1:実は『時計じかけのオレンジ』の方を先に知ってしまったので、なんとも微妙な気持ちでした……。
*2:アニメ『プリパラ』の黄木あじみ先生は、この血を受け継いでいるのか…? 床に転がって円を描くアクションに見覚えが......。